新しいタイポグラフィの表現を可能にするために 日本語プロポーショナルかなフォント かづらき® の取り組み

Chinese

Extracted from Adobe EDGE 2009年2月
アドビ システムズには、Flashなどのソフトウェア開発チームだけでなく、フォント開発チームも存在します。フォント開発チームでは、文字コミュニケーションにおいて重要となるタイポグラフィに新しい可能性をもたらす画期的なデジタル・フォントを作成しようと取り組んでおり、その1つが「かづらき」書体です。本記事では、「かづらき」書体の特徴とその源について紹介します。

かづらき®T Shirt

かづらき®Tシャツ

Adobe® MAX Japan 2009(1月29日、30日)に参加された方はご存知かもしれませんが、これは、かづらき®Tシャツです。天空を横切る流れ星、びっくりした表情のお公家様、独特の流れるような筆書きの書体があしらわれています。しかも、その書体で何やら難しそうな言葉が印刷されています……。
このTシャツは、現在開発中のプロポーショナルかな書体かづらき を使ってデザインされています。書かれている言葉も、その書体の由来に関係する内容なのです。

アドビ システムズ の書体デザイナー西塚涼子
アドビ システムズ の書体デザイナー西塚涼子は、まだ美術大学生だった頃、鎌倉時代の歌人、藤原定家(1162-1241)の書風に触発されます。それを独自に解釈することで、何とか印刷用の書体としてデザインすることができないか。そう考えて、卒業制作の課題として取り組むことにしました。大学を卒業してからも定家の書風に対する愛着は消えることはありません。さらに制作を続け、定家様式のタイプフェイスのプロトタイプを完成させます。その作品は2002年のモリサワ賞国際タイプフェイスコンテストで銀賞に輝きました。そのデザインをベースに、現在、アドビ システムズのフォント開発チームは、かづらき書体の開発に取り組んでいます。


藤原定家はその自筆本が国宝となっている日記『明月記』 などで知られる歌人ですが、独特の書風でも知られます。このTシャツに書いてある言葉「客星觜参(ししん)の度に出づ。東方に見る。天関星に孛(はい)す。大きさ歳星の如し」は、定家が 「かに星雲」の超新星爆発の事件(1054年)について書いた言葉です。その意味は「客星(超新星または彗星の意)が、オリオン座の東の方に見えた。それはおうし座ζ(ゼータ)星の近くに現れ、大きさは木星ほどであった」ということです。超新星や彗星は不吉の前兆と考えられていました。かづらきTシャツは、不吉な星の出現に驚くお公家様の様子を描いているのです。
さて、かづらき書体は、何が従来の日本語書体と違うのでしょうか。それは、文字が正方形の枠内でデザインされているのではなく、文字ごとに文字の幅や高さが大きく異なる点にあります。

かづらきの文字は欧文書体のように各文字が固有の字幅を持っています

明朝体でもゴシック体でも、従来の印刷書体は、雑誌や書籍など、長い文章の読みやすさ、制作段階での文字の組みやすさのために、通常は正方形の範囲(全角)の内側にちょうどうまく収まるようにデザインされてきました。従来の日本語の印刷書体は「等幅」とか「モノスペース」とか呼ばれて、仮名や漢字については、どの文字も同じ高さと幅を持ち、そのため、縦組みでも横組みでも同じ文字を使って、規則正しく文字が配列されます。

かづらきを用いた印字サンプル

かづらきを用いた印字サンプル

開発段階のサンプルのため、デザインおよび書体名は予告なく変更されることがあります)
たしかに、従来の書体は、長い文章を組む場合に読みやすく適しています。ですから、今後も明朝体やゴシック体は標準的な書体として広く使われることは間違いありません。しかし、他方で、手書きの本来の仮名文字が持っていた自由で躍動感のある形を、正方形の枠内でデザインした従来の書体で再現することは不可能でした。かづらきでは、 OpenTypeフォントの技術を用いることで、文字ごとに固有の字幅を縦組み用と横組み用双方に持たせることが可能になりました。日本語の印刷書体では文字はかならず正方形の枠内にデザインされるという制約を取り除くことができたのです。それによって、藤原定家の書風が持つ自由でダイナミックな形を現代のデジタル・フォントの書体デザインに反映させることができました。また、字幅を一定にする必要がないため、複数の文字を連続させて1つの文字にした「合字」をデザインすることも容易になりました。OpenTypeフォントの仕組みと組み合わせることで、特定の文字の組み合わせに対して自動的に連続した形の「合字」で表示することも可能になりました。
ところで、定家のかなの解釈について西塚涼子の考えを聞いてみました。
西塚:定家は日記以外にも、多くの物語や歌を書き写しています。究極の美を追求しているかに見える他のかな書の名品とは異なり、連綿は少なく、独立した文字で書かれています。私の想像ですが、最高の美術を残すというよりも、自らが見聞きした事柄を読み物として後世に伝えるという目的意識が強く働いていたと思います。それは、現代の私たちがデジタル・フォントを使って文字を書き留めている状況と同様の、文字の実用性に根ざしたものだったのでしょう。そのようなことを考えつつ、かづらきのデザインに取り組んでいます。
現時点ではまだ、かづらきは開発中の段階であり、リリース方法や時期などは未定です。また、かづらきは基本的にはプロポーショナルかな書体ですが、漢字についても、特に挨拶状や和食のメニューに使うことのできる 約1,000文字だけについては対応する予定です。文字種が限られているため、用途としては広告のタイトル、見出し、ロゴ、メニュー、挨拶状など限定的なものとなるかもしれませんが、既存の書体にない手書きの書風を持つ独特のデザインが新鮮でタイポグラフィックな効果を与えることが期待できます。
ところで。「かづらき」という名前は、定家が詠んだ歌に由来しています。

歎くとも 恋ふとも逢はん 道やなき 君葛城の 峰の白雲

『拾遺愚草』1216年より

身分違いの恋の歌なのです。
さて、アドビ システムズでは、クリエイターやデザイナーが新しい表現形式を積極的に切り拓いていく上で役に立つ技術やツールの開発に努めています。今回ご紹介したかづらき書体も、文字によるコミュニケーションにおいて重要となるタイポグラフィの世界に新しい可能性をもたらす画期的なデジタル・フォントになると考えています。
Special-Purpose OpenType Japanese Font Tutorial: Kazuraki


かづらき(Kazuraki): 破框而出的书法字库
Japanese
很多人喜欢行书的行云流水,草书的转化跌宕、气势磅礴。和正文字体相比,行书和草书更注重字与字之间的关系,讲究的是疏密有致和恰当好处的连笔。将这类书法字体信息化,制作成充满神韵的印刷字体,对于很多字体设计师和用户来讲一直是个梦想,而这个梦想正逐渐照进现实。

かづらき®T Shirt

かづらき®T Shirt

今年一月底的时候,在日本举办了Adobe® MAX Japan 2009,与会者得到了上图所示的T Shirt,T Shirt的正面展现的是横穿天空的流星和表情吃惊的朝臣,背面是行云流水般的文字,或许您会问,它们用的是印刷字体吗?
这件TShirt上的字体使用的是Adobe正在开发的名为 “かづらき”(Kazuraki)的变宽假名字库, 而文中的内容与该字体的来历也有着紧密的联系。

资深字型设计师:西塚涼子
Adobe 资深字体设计师西塚凉子,在大学时代就被镰仓时代的诗人,藤原定家(1162-1241)的书法风格所打动。她一直倾心于将定家书风制作成打印字体,并将其作为她毕业设计课题。 即使大学毕业之后,她对定家书风的迷恋也从未消失过,一直坚持制作该字体,在2002年日本森泽国际字体大赛中该字体设计获得了银奖。 现在基于该设计,Adobe 的字体开发团队正致力于かづらき(Kazuraki)字体的开发。

藤原定家的手稿
藤原定家是十二世纪镰仓时代的诗人,他的诗歌,日志及文集至今还被广为流传,不仅他亲书的日本国宝级日志《明月记》为世人所知,其独特的书法风格也非常著名。在T恤上印的 “客星觜参(ししん)の度に出づ。東方に見る。天関星に孛(はい)す。大きさ歳星の如し”是藤原定家关于1054年「巨蟹星云」超新星爆炸事件的记载。
而该款字体的名称かづらき(kazuraki)也来源于藤原定家的《拾遺愚草》中的” 歎くとも 恋ふとも逢はん 道やなき 君葛城の 峰の白雲”。葛城位于奈良,而かづらき是”葛城”的谐音。藤原定家通过这首诗歌悲哀地表达了对一贵族女子因地位悬殊而无结果的爱情,他形容那女子就象葛城里山峰上的白云,遥不可及。

与其它的日文字库相比,かづらき(kazuraki)最大的特点是什么?这款字库最大的特点是字形的设计突破了正方形范围的限制,每个字形的幅度和高度都不相同。

かづらき(kazuraki)的字形可以象西文字体一样地每个字形拥有各自的字幅

目前常见的印刷字体,比如宋、黑、仿、楷,多用于正文排版。考虑到排版物的易读性,在制作字库时,通常在正方形框范围内设计字形,并保证字与字之间具有相同的距离。这样,无论是横排还是竖排,字形的排列都非常整齐易读。而书法之美在于随意和韵律,因此かづらき(kazuraki)的字形设计没有拘泥于正方形框范围之内,而是根据字形本身的需要设计字身,既不等宽也不等高,形成错落有致的排版效果。
かづらき(kazuraki)采用了 OpenType字体技术,该技术实现了字形在竖排和横排时不等幅的效果,打破了原来印刷文字必须在固定框内的限制。同时,为了展现藤原定家的自由书风,在设计时采用了OpenType的连笔字特性,使特定的几个文字在竖排时自动组合成连笔字形,恰当的连笔使字体风格更加流畅、活泼。

かづらき样张

かづらき(kazuraki)字体排版样张

かづらき(kazuraki)尚处在开发阶段,目前它只是变宽的假名字体,支持1000左右个汉字,我们还将继续完善该字库。另外值得一提的是,Adobe CS4 中的InDesign 和Illustrator完全支持かづらき(kazuraki)字体的特殊设置,能够充分展现设计师别具匠心的设计。
一直以来,Adobe 积极地致力于开发有用的技术和工具,对于在文字交流中占重要位置的印刷术而言,かづらき(kazuraki)是一款划时代的新数字字体,也希望这款字的出现能推动书法字体数字化的发展,为现有的字体开发带来新鲜的气息。
注:该中文译稿是意译,所以会和原文有所出入,请见谅 :-) 懂日语的朋友可以参考上面的日文原稿。
Special-Purpose OpenType Japanese Font Tutorial: Kazuraki

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