アドビはFreeTypeにCFFラスタライザー技術を提供

[This Japanese version of the May 1, 2013 Typblography article entitled Adobe contributes font rasterizer technology to FreeType is courtesy of Hitomi Kudo (工藤仁美).]

本日アドビはFreeTypeに対してCFFラスタライザー技術の提供を発表しました。実際のコードはすでにFreeTypeの最新ベータ版にて試すことができます。このオープンソースプロジェクトは、アドビ、グーグル、およびFreeTypeの協力により、FreeTypeを使用したデバイス上でより美しいCFF描画を可能にすることを目的に行われています。

近年のフォントは、TrueTypeかCFFどちらかのフォーマットを使用するのが通例です。TrueTypeは1990年にアップルによって開発されたフォーマットですが、CFF(Compact Font Format)は、アドビが1984年にリリースした(PostScriptフォントとして知られている)Type 1フォントフォーマットの第2世代にあたるフォーマットです。OpenTypeフォントでは、TrueTypeとCFFどちらも使用可能となっています。この二つのフォーマットは多くの共通点がありますが、最大の違いは次の2点です。カーブの表現に違う数式が使用されること、そして「ヒント」の形式が違うことです。(「ヒント」とは、限定されたピクセル数の中でも書体が最適の条件で表現されるようラスタライザーに指示を与えること)TrueTypeは殆どのヒント情報をフォント内のデータとして保持していますが、Type 1やCFFフォントの場合は高度なインテリジェンスをもつラスタライザーに多くを依存しています。

オープンソースのフォントレンダリングライブラリであるFreeTypeは、Android、Chrome OS、iOS、GNU/Linux、その他のオープンなUnix OS(FreeBSDやNetBSD)などで広く利用されています。そのためFreeTypeは、フォントのレンダリングソフトウェアとして数億以上の機器で使用されていることになります。FreeTypeを製品に利用しているグーグルは、現状でTrueTypeフォントを使用するユーザに対して、CFFフォントにおいても高性能なレンダリング機能を提供できるよう模索していました。そこでグーグルは、アドビのラスタライザー技術をFreeTypeに組み込むようアドビに呼びかけ、当プロジェクトに対し必要な予算面でのサポートを提供してきました。

長年フォントとフォントレンダリング技術の開発をしてきたアドビにとって、今回のFreeTypeへの貢献は、CFFフォントをより多くのデバイス上で高品質に表示できるようにするための、絶好のチャンスでもあります。12年前に、アップル・マイクロソフトとアドビが協力しデスクトップOS上でType 1とCFFフォントのネイティブサポートを実現した時と同様、またその後マイクロソフトと協力しWPFやDirectWriteにCFFラスタライザーを組み込んだ時と同様に、今回のアドビのFreeTypeへの貢献は、多くのユーザに対してCFFフォントを使用するユーザエクスペリエンスを飛躍的に向上させるでしょう。この新しいバージョンのFreeTypeを利用したデバイスを使うユーザは、Windows OSやOS X上で見ることのできる高品質なCFFフォント描画と同じ品質の表示を経験できることになります。

以下のサンプルでは、FreeTypeがAdobe CFFエンジンを使用した場合の違いを確認することができます。左のサンプルはFreeTypeでネイティブのヒント技術を使用した場合、真ん中のサンプルはFreeTypeのlight-autoヒントを使用した場合、そして右のサンプルはAdobe CFFエンジンを組み込んだFreeTypeを使用した場合の表示です。この画像をクリックすると、拡大イメージが表示されます。

上記の例では、フォントのレンダリングにおける小さな改善の積み重ねが効果を表していることがわかります。Adobe CFFエンジンは、stemを区別できるようheight方向にピクセルを追加したり、コントラストをあげるため文字がつぶれない程度にstem幅を増やしてみたり、充分なピクセルが使用できない時に特定のstemのみヒントなしにすることによって可読性を上げたり、などの豊富な機能を満載しています。

CFFフォントはこれまで長年の間、広くデスクトップ上で使用されてきましたが、Webやモバイルデバイス上ではほとんどTrueTypeのみが使用されていました。この背景には、「詳細なヒント情報を付加した」TrueTypeフォントが、低解像度・白黒での表示においてより簡易に良い表示結果を出せた、という過去の事情が影響していると考えられます。

高機能なCFFフォントサポートによって、開発者はより豊富なフォントの選択が可能になります。Miguel Sousaが彼のブログポストで述べているとおり、CFFは世界でもっとも人気のあるフォントフォーマットであるだけでなく、Webやモバイルにとっても優れたフォントフォーマットなのです。CFFのメリットとしてあげられる2つの重要な点は、ファイルサイズが小さい事と、非常に広範囲な環境やデバイスに合わせて高品質なレンダリングを行える柔軟でパワフルなヒントの取り扱いにあると言えるでしょう。

アドビがFreeTypeに提供したCFFラスタライザーのコードに興味がある場合は、FreeTypeのウェブサイト(www.freetype.org)から入手できます。コードはベータの状態にありデフォルトではオフになっているため、新しく追加されたCFFドライバの「hinting-engine」プロパティを明示的に選択する必要があります。さらに詳細な説明は、FreeTypeの「CHANGES」ファイルに記載されています。テスト用のCFFフォントが必要な場合は、アドビが提供する無料のオープンソースフォントであるSource SansSource Codeフォントをダウンロードすることをお勧めします。これらはSourceForge上にあるOpen@Adobeポータルからダウンロードできます。

さらにグーグルのサイトもご参照ください。

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